大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和23(れ)779 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人野村信孝再上告趣意は別紙書面記載のとおりである。

第一点について。

しかし刑訴応急措置法第一二条第一項は、同法所定の書類の証拠能力に関し、被

告人からこれら書類の供述者又は作成者に対する直接訊問の請求があつた場合に関

する規定であつて、かかる請求がない場合でも裁判長が進んで被告人にこれらの者

を直接訊問する機会を与えなければ、これら書類を証拠とすることが出来ないとい

う趣旨であると解すべき理由がないこと、そしてこの解釈は憲法第三七条第二項の

趣旨にも反するものでないことも当裁判所の判例とするところである。(昭和二二

年(れ)第二七一号昭和二三年六月三〇日大法廷判決参照)

再上告人は本件具体的証拠調が刑訴応急措置法公布後一ケ月も経過しない公判期

日に於て行はれたような場合には、少くとも始末書作成者の訊問を請求する権利の

あることの注意を喚起することは裁判長の義務と解するというのであるが、被告人

のかかる法律上の知識の欠如を補つて、その弁護権の行使に遺憾なからしむる為め

弁護人が附されているのであつて、弁護人が附されている以上猶更かかる法律上の

知識の欠如を裁判長の義務に転嫁せしめることは許されないところである。

記録によれば、第二審裁判所で裁判長が刑訴第三四七条に基いて証拠調をした際

に被告人又は弁護人から始末書作成者の訊問請求をしなかつた為め、該始末書を証

拠としたことは所論のとおりであるが、仮りに右訊問の機会が与えられなかつた所

論のような事情があつたとしても、第二審判決が前記各始末書を証拠としたことは

以上説示したとおり何等刑訴応急措置法第一二条第一項に違反したものということ

はできない。仍て右第二審判決を是認した原判決には所論のような違法はないから

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論旨は理由がない。

第二点及第三点について。

本件において所論の右始末書が証拠能力があることは第一点で説示したとおりで

あつて、その証拠能力のないことを前提とする本論旨は孰れも採用することができ

ない。

以上何れも理由がないから、刑事訴訟法第四四六条に従い主文のとおり判決する。

この判決は栗山裁判官の反対意見を除く他の裁判官の一致した意見である。(栗

山裁判官の反対意見は昭和二三年(れ)第一六七号同年七月一九日宣告大法廷判決

所載のとおりである。)

検察官 十蔵寺宗雄関与

昭和二三年一二月一八日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 塚 崎 直 義

裁判官 霜 山 精 一

裁判官 栗 山 茂

裁判官 藤 田 八 郎

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